ミミズを有効利用し、有機性廃棄物である生ごみや動物のフンを堆肥化することは、ミミズコンポストやバーミコンポストと呼ばれています。
今回紹介する論文では現在、動物の排泄物の肥料価値は十分に活用されておらず、その結果、潜在的な栄養素が損失していたり、 動物の排泄物の臭いが問題視されていると指摘しています。
ミミズの堆肥化により、このような有機性廃棄物がは2つの有用な製品に生物変換されるとし、一つはミミズ由来のタンパク質、もう一つは、ミミズコンポストも優れた製品と見なされます。
この研究では、異なる動物(牛、水牛、馬、ロバ、羊、山羊、ラクダ)の排泄物が、ミミズコンポストに用いられるシマミミズの成長と繁殖にどのような影響を及ぼすかといった調査をしています。
Growth and reproduction of Eisenia foetida in various animal wastes during vermicomposting
〇背景
この論文は、動物のふん尿処理が深刻な問題であることを指摘し、インドで動物のふん尿の肥料価値が十分に利用されていないため、潜在的な栄養素が失われていると述べています。
それでは、どのような実験を行ったか見ていきましょう。
〇実験
牛、水牛、馬、ロバ、羊、山羊、ラクダの各排泄物に対し、15 週間にわたって、シマミミズの増加、死亡、性成熟、卵の生産を毎週記録したとのこと。
〇結果
・死亡
まず、いずれの排泄物でも死亡は観察されませんでした。
・体重増加
最大のミミズの体重は、羊の排泄物で最大、馬の排泄物で最小になりました 。
ミミズによる最大体重は、牛、羊、山羊、ラクダの排泄物では 6 週間で達成され、
ロバ、馬、水牛の排泄物ではそれぞれ 9、10、13 週間かかりました。
最大に到達した以降は、餌(排泄物)の減少とともに体重も減少したとのこと。
排泄物の乾燥重量 1 g あたりのミミズの体重増加は、羊 > ロバ > 水牛 > 山羊≈ 牛 ≈ 馬 > ラクダとなり、
羊の排泄物中のミミズの純体重増加量は、ラクダの排泄物の 1.92 倍でした。
・性的発達と産卵について
異なる排泄物中で1匹のミミズあたりの1日あたりの産卵数は、羊>牛≒馬≒山羊>ラクダ>ロバ>水牛の順でした。
詳しく見ていきますと、羊のふん尿では、1匹のミミズあたり1日あたりの卵の数が0.44±0.052であり、水牛のふん尿で生産される0.19±0.072の卵の数の231%増加しました。
前述の、ミミズの体重増加では水牛、ロバの排泄物が有利だったものの、産卵数が少ないのは、ミミズの活動エネルギーが、産卵に使用されず成長に利用されていると記述されています。
が、なぜ羊の排泄物はミミズの成長にも産卵にも有利に働いているかは書かれていませんでした。。。
まとめ
以上より、牛、馬、羊、山羊のふん尿は、シマミミズの成長と繁殖をサポートするため、大規模なミミズ堆肥化施設で飼料として使用できると結論づけられました。
動物の排泄物の違いによりシマミミズの成長や繁殖率が異なりますが、水牛、ロバ、ラクダのふん尿を牛または羊または山羊のふん尿と混合して使用する可能性を探るために、さらなる研究が必要であるとされています。
このような面白い実験が行われています。
本実験では動物の排泄物別の影響を調査していますが、家庭から出る生ゴミの違いによっても違いが出るかもしれませんね。
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