こんにちは
今回は生分解性プラスチックかつ、バイオマスプラスチックの代表であるポリ乳酸の熱物性についてイメージ図を用いながら解説します。
ポリ乳酸はその特徴から、環境配慮に優れたプラスチックとして注目されておりますが、製品にする際は、成形性が悪いと言われております。
それでは、ポリ乳酸の物性や分子構造を押さえながら、成形性にも起因する熱物性について説明します。
ポリ乳酸の熱物性について〜融点〜
プラスチック成形において重要である融点からみていきましょう。
ポリ乳酸の融点は樹脂グレードによって違っており150℃~180℃と幅があります。
このような樹脂グレードの違いによる融点の幅は、ポリ乳酸の高分子鎖中のPLLAとPDLAの割合によって変化します。
PLLAとPDLAとは?ポリ乳酸の構造の特徴についてはコチラをご参照ください。
簡単に説明しますと、ポリ乳酸は下図のように鏡像異性体(光学異性体)をもち、L体のみを重合させたものをPLLA、D体のみを重合させたものPDLAとよばれています。
ポリ乳酸の生産において、基本的にはPLLAを多く占めるものが出来上がりますが、重合する際の条件等によってD体へ変化する割合が数%レベルで変わってきます。
PLA高分子鎖中のPLLAとPDLAの割合の差が大きくなると融点は下がります。
これは、PLLA鎖中にPDLAという不純物が入り込んで結晶化を阻害しているイメージです。
逆に、純粋なPLLAまたは、純粋なPDLAに近づくほど融点は高くなります。
ポリ乳酸の熱物性について〜ガラス転移点〜
ポリ乳酸のガラス転移点は約58℃を示します。
ポリ乳酸の成形時の問題点としては結晶化速度が遅いことです。
すなわち、溶融させてから時間をかけないと固まらないということです。
では、ここで、プラスチックの融点とガラス転移点とはなにかについて分子レベルで解説します。
融点とは一般的には固体が融解して液体状になる温度ですが、プラスチックの場合は結晶が融解して非結晶になる温度です。
そのため、PVCやPS、PCなど結晶を持たない非晶性プラスチックに融点はありません。
続いて、ガラス転移点については非結晶部分が、固体と液体の性質の間に変化する温度です。
すなわち、ガラス転移点以下では、非晶質材料は硬くなり、一方、ガラス転移点以上では、非晶質材料は柔らかくなります。
さて、次に射出成形の基礎についてですが、簡単に説明するとチョコの成型のように、融解させたプラスチックを金型に流しこみ、冷やし固めて成形します。
PLAのように結晶化が遅いようなプラスチックの場合、冷やし固める工程に時間がかかります。
すなわち、成形サイクルが長くなることを意味し、成形効率が悪いため単価が高くなる原因の一つになってしまいます。
しかしながら、このような課題を解決するためにPLAの結晶化促進剤を添加することで結晶化速度をコントロールすることが出来ます。
ポリ乳酸の熱物性:融点とガラス転移点のまとめ
1. 融点
- PLLAとPDLAの割合が融点に影響を与える。
- PLLA含有量が多いほど融点が高くなり、PDLA含有量が多いほど融点低くなる。
- 結晶化促進剤を添加することで、結晶化速度をコントロールできる。
2. ガラス転移点
- 成形時の問題点として、結晶化速度が遅い。
- 射出成形では、成形サイクルが長くなり、生産効率が低下する可能性がある。
3. 射出成形
- 溶融プラスチックを金型に注入し、冷却固化させて製品を作る成形方法。
- 結晶化速度が遅いポリ乳酸の場合は、成形サイクルが長くなる。
コメント