ミミズと農薬、持続可能な農業について:レビュー②

ミミズコンポスト

コチラの論文「Earthworms, pesticides and sustainable agriculture: a review」では、農業の持続可能性について言述べられています。

前編は、通常のコンポストとミミズコンポストの比較などが書かれていますので、まだの方はコチラからどうぞ!

後編もミミズもたらす植物への間接的なメリットについて述べられています。

植物の成長調節機構

前編①の報告例にもあるように、ミミズ堆肥は、植物の成長と収量を刺激する可能性があります。

ミミズ堆肥の添加後の総空隙率と保水能力の増加が顕著に報告されています (Campitelli and Ceppi 2008; Hidalgo et al. 2006; Lim et al. 2015b)。

フェレラスら (2006) は、2 年連続で農業土壌に 1 ヘクタール当たり 20 トンのミミズ堆肥を添加すると、土壌の多孔性が大幅に改善されたことを観察しました。

これらの変化により、水はけや通気がよくなり、植物の苗の出現と根の成長の速度が向上します。

また、ミミズ堆肥は、植物成長調節剤 (PGR;Plant Growth Regulator)の供給を通じて植物の成長に直接影響を与える可能性があります。

Neilson (1965) および Zhang et al. (2015)は ミミズ堆肥に関する研究で、ミミズが成長促進ホルモンのオーキシン、サイトカイニン、開花ホルモンのジベレリンを分泌していることも報告しています。

ミミズは有機基質における微生物の活動を刺激および促進することにより、微生物による PGR の生産に影響を与えることができる重要な因子となりえます。

しかし、一部の研究者は、ミミズではなく微生物が PGR の生産に関与していると強調しています。

ミミズ堆肥の添加によって現れる「ホルモン誘発活性」などの成長反応は、ミミズ堆肥中の高レベルのフミン酸に関連している可能性があると推測しています。

別の報告では、フミン酸が根の成長を刺激し、根毛の増殖を増加させ、根の細胞膜の透過性を増加させることにより、植物による栄養素の取り込みを強化することも示唆されています。

ミミズ堆肥が植物にもたらす間接的なメリット


ミミズ堆肥は、間接的に植物に利益をもたらす働きもあります。

第一に、ミミズ堆肥はさまざまな病気や害虫から植物を守ります。

さらに、いくつかの抗生物質と放線菌が含まれているため、植物に生物学的耐性を誘発する能力があります。

このことから、ミミズやミミズ堆肥が農業に使用されている地域では、殺虫剤の使用が大幅に減少しました (Rao et al. 2007; Suhane 2007)。

第二に、ミミズ堆肥化中に害虫の数が減少すると推測しています。

Edwards と Arancon (2004) は、トマト、ピーマン、キャベツの試験において、ミミズ堆肥を 20 % および 40 % 添加することで植物被害が大幅に減少し、節足動物 (アブラムシ、芽、コナカイガラムシ、ハダニ) の個体数が統計的に有意に減少したことを報告しています。

同様に、トマト、ピーマン、イチゴ、ブドウの植物に固形ミミズ堆肥を適用することにより、植物寄生線虫の個体数が大幅に抑制されることを実証した報告もあるそうです。

ミミズ堆肥は、シデロホア、キチナーゼ、抗生物質、蛍光色素、シアン化物を生成することにより、発育性真菌に対して拮抗する役割を果たすことが知られています。

ミミズ堆肥がピシウム、リゾクトニア、バーティシリウム、プレクトスポリウムなどの植物病原菌に対して抑制効果を発揮することを観察しました。その結果、ミミズ堆肥を殺菌するとこれらの効果が消失することにより、病気の抑制は生物学的抑制物質の存在に関連している可能性があるとのことです。

ミミズ堆肥は、「硝酸塩 (N)」、「リン酸塩 (P)」、「可溶性」カリウム (K)、マグネシウム (Mg)、「交換性」リン (P)、カルシウム (Ca) などの栄養素を植物に高い生物学的利用能をもたらします。 (Edwards et al. 2004)。

ミミズ堆肥の表面積が大きいため、微生物の活動の場が多く露出し、栄養素の強力な保持にもつながります (Arancon 2004)。

ミミズ堆肥化のプロセス中に、N、P、Ca、Mg、K などの栄養素が放出され、微生物の活動によって、より可溶性で同化されやすい形に変換されます (Martín-Gil et al. 2008)。

微生物の多様性を増加させ、植物の成長を促進する傾向があります。 ミミズ堆肥には微生物叢、特に細菌、菌類、放線菌が豊富に含まれています (Scheu 1987; Singh 2009; Tiwari et al. 1989)。

菌類、放線菌、酵母、藻類、オーキシン、ジベレリン、イトカイニン、エチレン、アスコルビン酸などの PGRをかなりの量で生産することを示す多くの証拠があり、ミミズがその数を増やすため、より多くの PGR が利用可能になります。

植物成長促進細菌 (PGPB) は、窒素の固定、栄養素の可溶化、ミノシクロプロパン-1-カルボキシレート (ACC) デアミナーゼなどの成長ホルモンの産生によって成長を直接刺激します (Glick 2014)。

ミミズとバイオレメディエーション

バイオレメディエーション(Bioremediation)とは、微生物や植物等の生物が持つ化学物質の分解能力、蓄積能力などを利用して土壌や地下水等の汚染浄化を図る技術のことです。

土壌のバイオレメディエーションにおけるミミズの役割は、農業の持続可能性の促進に役立つ可能性があります (Wen et al. 2004)。

ミミズは植物の成長と微生物の発達を促進することにより、汚染された土壌の生物修復を促進できるといった報告があります。

ミミズは土壌において非常に重要な役割を果たしているため、ミミズにとって良い環境を作り出すことは、長期的には土壌の肥沃度を高め、生物多様性を保護することになります。

しかしながら、ミミズは残留農薬を蓄積することができるため、これらの残留物を食物中の上位の捕食者に拡散する可能性があります。

まとめ

ミミズ堆肥が様々な植物の成長と収量を刺激する可能性があることや、ミミズ堆肥の添加によって土壌の多孔性と保水能力が増加することが報告されていること、ミミズ堆肥が植物成長調節剤を供給することで成長に直接影響を与える可能性があることがよく分かったかと思います。

また、ミミズ堆肥が植物を病気や害虫から保護する効果があり、植物に生物学的耐性を誘発することが報告されています。

さらに、ミミズ堆肥は植物に栄養素を提供し、微生物の活動を刺激し、バイオレメディエーションによる土壌汚染物質を浄化する働きがあることが述べられていますが、ミミズは残留農薬を蓄積する可能性もあるため、その点に注意が必要です。

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