ミミズと農薬、持続可能な農業について:レビュー①

ミミズコンポスト

コチラの論文「Earthworms, pesticides and sustainable agriculture: a review」では、農業の持続可能性について述べられています。

現代の農業では、過剰な無機肥料や農薬の使用により、土壌の生物多様性が損なわれてしまっています。

持続可能な農業を実現するためには、生態系サービスを維持すること、持続可能な農業技術の採用、有機肥料への転換などの必要があります。

土壌と生物多様性

土壌生物には、膨大な種の多様性が含まれています。

たとえばミミズなどは、有害な元素の解毒など、多様な生態系サービスまたは機能を担う重要な役割を果たしています。

その他、植物の成長に必要な栄養素の供給、炭素固定、栄養循環、生物多様性の維持などが含まれます。

また、微生物多様性には、植物成長を促進する根圏細菌、N2固定シアノバクテリア、植物病気抑制細菌および菌類、土壌毒性物質分解微生物などが含まれており、土壌質の改善、土壌健康、作物の成長、品質、生産性の向上に寄与します。

しかし、酸性雨などの環境汚染は、土壌微生物活性を低下させ、土壌微生物群集の代謝能力を変化させる可能性があります。

それでは、農業生産性を向上させるミミズの働きについてみていきましょう。

ミミズ、ミミズ堆肥化、土壌、植物の健康

ミミズ堆肥はバーミコンポストとも呼ばれ、栄養豊富で微生物学的に活性な有機物です。

高い多孔性、保水力、低い C/N 比を備え、ほとんどの栄養素が植物に容易に吸収される形で含まれています。

食品の品質、環境安全、土壌保全の問題に関する消費者の懸念が高まっているため、持続可能な農業慣行の利用が大幅に増加しています。(Lazcano et al. 2011b)。

ミミズは土壌や土壌中の有機物を混ぜ、微生物にさらされる表面積を増やすことでその物理的および化学的状態を改質し、微生物の活動と有機物の分解をさらに促進します。

バーミコンポストを適用することで、化学肥料の使用を減らし、それによって環境汚染を抑えることができます。

ミミズ堆肥は、無機肥料と比較して、著しく多量の土壌有機炭素とその他の植物栄養素を生成します (Weber et al. 2007)。

破壊的な化学肥料と保護的な堆肥

化学肥料は食糧生産性を大きく向上させましたが、その代償として栄養の質と土壌の肥沃度はその後崩壊しました。

肥沃度(ひよくど)とは植物の生育を維持する土壌の能力を意味します。

化学肥料に頼ると作物の生物学的抵抗力を損ない、病気にかかりやすくなります。

また、肥沃度の回復に役立つ土壌微生物も死滅させるため、土壌にとっては問題となります。

窒素肥料の過剰な使用は、地下水中に浸出することによって無機窒素レベルを増加させ、食品中の無機窒素レベルを増加させ、人間の健康に重大な影響をもたらしました(Sinha et al. 2009)。

一方で、堆肥など生物由来のさまざまな栄養素を利用した有機農業システムは、将来の食の安全・安心へ繋がります。

堆肥は栄養素の優れた供給源であるだけでなく、肥沃度の向上、土壌の再生、植物の成長促進などに役立つ有益な土壌微生物も豊富に含んでいます (Alvarez et al. 1995)。

ミミズ堆肥を使用することにより、環境と社会はあらゆる恩恵を享受できると言えます。

コンポストとミミズコンポストの比較

通常のコンポストとミミズコンポストは、固形有機廃棄物の生物学的安定化に最適な 2 つのプロセスであることが知られています。

では、コンポストとミミズコンポストの簡単な比較を下表 に示します。

コンポストは、微生物の作用を伴う好熱性条件と中温性条件の両方を必要とする好気性プロセスで、2段階で構成されます。

第一に好熱性相で、分解が激しい堆肥化の活性相です。

第二に成熟段階で、残りの有機物がゆっくりと分解される中温温度によって特徴付けられます。

ミミズ堆肥化も好気性プロセスであり、もっぱら中温条件で、微生物とともにミミズの活動が関与します。

ミミズコンポストも2段階で構成されます。

第一にミミズが有機物を処理し、微生物の状態を変化させる活性段階です。

第二に微生物が分解の役割を引き継ぎ、未消化の別の層にミミズを移動させる成熟段階です。(Tognettiet al. 2005)。

コンポストは工業規模では十分に確立されていますが、ミミズコンポストはそのようなレベルではまだ適応されていません。

しかしながら、 2005 年にはミミズコンポストのほうがコンポストよりも栄養素の質と微生物の活動が優れていることが報告されました。

ミミズコンポストが植物の成長に及ぼす影響

ミミズコンポストは、ほうれん草、玉ねぎ、ジャガイモの収量を大幅に増加させたと報告されています。(Ansari 2008)。

また、Dhanalakshmiet al (2014) は、ミミズコンポストを含む土壌に播種したオクラ、ナス、トウガラシにおける根の長さ、シュートの長さ、枝葉の数が増加したことを報告しました。

トマトにおいても様々品質パラメーターが対照と比較してミミズ堆肥培地で大幅に増加しました。

さらに、イチゴ (Arancon et al. 2004)、落花生 (Kumar et al. 2014)、唐辛子 (Adhikary and Gantayet 2012)、ニンニク (Suthar 2009)、トマト (Abduli) およびスイートコーン (Lazcano et al. 2011b)などの園芸作物を含むさまざまな植物種の成長を刺激することも知られています。

芳香植物や薬用植物 (Prabha et al. 2007)、バナナやパパイヤなどの果樹作物 (Reddy et al. 2014)、およびゼラニウム (Chand et al. 2007)、マリーゴールド (Shadanpour et al.) などの観賞用植物にもプラスの効果があることが示されています。

研究の大部分が、ミミズコンポストが植物の成長と収量にプラスの影響を与えることを証明していることに疑いの余地はありません。

結論

ミミズが土壌に穴を掘る活動により、土壌の空隙率が増加し、土壌に通気され、土壌が無機化され、廃棄された有機物から栄養素を再利用する形に変換します。

化学肥料や殺虫剤を畑に使用すると、作物の収量は増加しますが、土壌中のミミズやその他の土壌微生物の生物多様性も損なわれてしまいます。

そのため、農家は農薬や化学肥料の使用量をごく少量または限界量に抑えるか、ミミズ堆肥などの他の代替品を使用する必要があります。


ミミズ堆肥は、ミミズの糞便、腐熟した有機物、微生物の複雑な混合物と言えます。

これらを土壌や植物成長培地に添加すると、発芽が増加し、成長、開花が促進され、果実の生産が促進されます。

植物の生物学的抵抗性の増加、植物成長ホルモンの供給、土壌の生物学的機能の改善など、さまざまな直接的および間接的なメカニズムが植物の成長の強化に関連している可能性があります。

このタイプの有機肥料を使用すると、投入栄養素と植物のニーズを微調整することができ、収量が最大化されます。

ミミズもたらす植物への間接的なメリットについては、後編に続きます。後編はコチラ

コメント

タイトルとURLをコピーしました